アトピー性皮膚炎は湿疹の一種です。いわゆる体質(皮膚の乾燥とバリアー機能異常)を基礎として、そこへ様々な刺激が引き金となり発症します。アトピー性皮膚炎は慢性に経過する疾患ですが、適切な治療と管理を行えば、治ったも同然の状態を維持することが可能です。当院院長および副院長は、大学病院皮膚科において、20年以上にわたりアトピー性皮膚炎の治療に携わり、多くの重症例を治療してきました。これらの経験を生かし、皆様の治療とスキンケアのお手伝いをできれば嬉しく存じます。どうぞお気軽にお越しください。
アトピー性皮膚炎は慢性に経過する湿疹であり、何かの治療を行うことで永久に完治させることは困難です。しかし、適切な治療とスキンケアを行うことで、湿疹の悪化を抑えることは可能です。当院では以下の治療方針にてアトピー性皮膚炎のコントロールを目指しています。
1. できるだけ速やかに症状を軽快させます
湿疹の重症度に合わせ、即効性のあるステロイド外用剤と抗アレルギー内服薬により、ひどい皮膚炎と痒みを軽快させます。難治なアトピー性皮膚炎の場合は、生物学的製剤(デュピルマブ)の使用も可能です。
2. 症状の軽快に合わせて、適切な薬を調節します
アトピー性皮膚炎の治療薬は1種類ではありません。症状の重症度、塗る体の部位、年齢などにより選択するべき薬の種類は異なります。重症例に使う塗り薬を軽症になっても使い続ければ副作用の問題が起こり、軽症例に使う薬を重症化してから使っても効果は期待できません。当院では、特に症状の変化が激しい治療初期において、こまめな診療と毎回の変化に合わせた塗り薬のカスタマイズをお勧めしています。
3. 症状が落ち着いたら、維持療法に切り替えます
湿疹の赤みと痒みが落ち着けば、次は維持療法です。維持療法は、副作用の少ないお薬や弱いステロイド、保湿剤を柱とし、悪化時に適宜必要な強さのステロイドで押さえ込む方法です。
3. 治療がうまくいかない原因を一緒に考えます
アトピー性皮膚炎の治療がうまくいかない場合には、様々な要因が考えられます。我々医師は、アトピーに限らず、治療がうまくいかない時は以下のようなことを考えています。
外来で患者さんがよくお尋ねになるステロイドの副作用。しかし、私たちが「どんな副作用ががご心配ですか?」とお伺いしても、答えることは難しいもの。ステロイドを心配する方の多くは、「どういうことが起こるか判らないが何となく怖い薬」という漠然とした不安をもたれています。また、副作用が心配だからと、わざとステロイドを薄く伸ばして塗る方がいらっしゃいますが、これでは治療効果が上がらず、かえって湿疹を長期化させてしまいます。
ステロイド外用剤の副作用には、
・皮膚の萎縮(皮膚が薄くなる)
・毛細血管拡張(糸くずのような血管が目立つ)
・感染症(にきびの悪化、とびひや水いぼの発生など)
・多毛(産毛が濃くなる)
などが知られています。
ほとんどの副作用は、適切な観察をしないままに漫然と薬を塗り続けることで発症します。逆に言えば、適切な間隔で診療を行い、その時々に応じて適切な薬を選択することで、副作用の発生は押さえ込むことが可能です。
一方で、初期の副作用は症状の変化が軽微で、患者さんやご家族の方による早期発見は極めて難しいです。治療効果の速やかな発現とその維持、副作用の早期発見には、熟練した皮膚科専門医の眼による定期的な診察と細やかな観察が必要です。
当院では、副作用対策として、
・患者さんの心配や疑問をお伺いし適切なアドバイスを行う
・重症度に見合った定期的な通院の勧め
・その時点における適切な薬の選択
・正しい塗り方(方法、必要な量、治療の頻度、治療のタイミング)の細かな指導
・副作用の起こりにくい薬の使用法
・万が一副作用が起こった時の早期発見、早期対応(患者さんも気づかないうちに発見可能)
を行っています。ご心配なことがありましたら、遠慮なくご相談ください。
アトピー性皮膚炎の塗り薬には、大きく分けてステロイド、タクロリムス、デルゴシチニブ、保湿剤の4種類があり、それぞれ長所と短所を持っています。
ステロイド外用剤は、速やかに湿疹を抑える力に優れる反面、長期に使用すると皮膚の萎縮、毛細血管拡張、感染症などを起こすことがあります。タクロリムス外用剤は、皮膚萎縮や毛細血管拡張を起こしませんが、湿疹を抑える力に即効性が乏しく、患者さんによっては刺激感や灼熱感を感じることがあります。保湿剤は肌の保湿と保護効果に優れていますが、赤みや痒みを止める力はなく、種類によっては刺激を感じることがあります。
当院ではこれらの薬の長所を最大限に引き出し、また短所を最小限に抑えるため、「外用連続療法」をお勧めしています。
最初に、即効性があり刺激の少ないステロイド外用剤を1日2回塗り、速やかに湿疹の赤みと痒みを抑えます。湿疹が改善したら、タクロリムス外用剤またはデルゴシチニブ外用剤を朝1回、ステロイド外用剤を夜1回外用します。さらに観察を続け、刺激がなければ1日2回、タクロリムス外用剤またはデルゴシチニブ外用剤を外用します。保湿剤は、刺激のないものを適宜選択して使用します。
外用連続療法は熟練した医師の監督下において行うことで、有効性と安全性が認められている治療です。当院では、医師がこまめな観察と指導を行いながら本療法を実践することで、多くの患者さんが上手に湿疹のコントロールを続けています。
デュピルマブは、アトピー性皮膚炎の炎症をおこすタンパク質「IL-4」「IL-13」の細胞受容体を阻害する薬です。日本では2018年より処方が可能になっています。
IL-4やIL-13は、皮膚の細胞にある受容体から細胞内に取り込まれることで細胞内の情報シグナルを活性化し、皮膚炎や痒みを誘発します。
デュピルマブは、IL-4やIL-13の細胞受容体を阻害することで、細胞内の情報シグナルを制御し、皮膚炎や痒みを抑えることができます。
デュピルマブは2週間に1回投与する注射薬です。通常の外用療法で効果が見られない中等度以上の成人アトピー性皮膚炎の患者さんが適応です。
治験データからは、治療開始後4ヶ月で、70%の患者さんにおいて皮膚症状の重症度が75%以上改善することが期待できます。
デュピルマブは当クリニックにて処方可能です。
JAK阻害剤は、細胞内の情報伝達タンパク質「JAK」の働きを抑える薬です。
JAKは、細胞内の情報伝達シグナル経路の1つで、細胞表面のサイトカイン受容体から信号を受け取り、核内のDNAを刺激することで、アトピー性皮膚炎の皮膚炎や痒みを誘発する物質を作り出します。
JAK阻害剤は、JAKの働きを阻害することで、細胞内の情報シグナルを制御し、皮膚炎や痒みを抑えることができます。
JAK阻害剤には、塗り薬(デルゴシチニブ)、飲み薬(バリシチニブ、ウパダシチニブ)があります。
当院では、塗り薬であるデルゴシチニブを主に処方いたします。飲み薬については、事前および年1回程度の感染症検査が必要なため、基幹病院と連携の上、処方を検討いたします。
ネモリズマブは、痒みに関係するタンパク質である「IL-31」の働きを抑える薬です。
IL-31は、細胞内の情報伝達シグナル経路の1つで、皮膚の神経に作用して直接的に痒みを引き起こし、さらに痒みを感じる神経を皮膚の浅い部分に誘導する作用があります。
ネモリズマブは、IL-31の働きを阻害することで、アトピー性皮膚炎の痒みを抑えることができます。
ネモリズマブは4週間に1回投与する注射薬です。通常の外用療法で効果が見られない中等度以上、13歳以上のアトピー性皮膚炎の患者さんが適応です。
治験データからは、治療開始後4ヶ月で、痒みの強さが40%低下することが期待できます。
ネモリズマブは当クリニックにて処方可能です。
PDE4阻害剤は、細胞内のタンパク質「PDE4」の働きを抑える薬です。
PDE4は多くの炎症細胞に存在し、細胞のエネルギー代謝に関わる分子であるcAMPをAMPに変換する作用を持ちます。
炎症細胞内でcAMP濃度が低下すると、炎症を誘発するサイトカインやケモカインなど、アトピー性皮膚炎の皮膚炎や痒みを誘発する物質が生み出されます。
PDE4阻害剤は、PDE4の働きを阻害することで、細胞内のcAMP濃度を上昇させ、炎症誘発性サイトカインやケモカインの産生を抑えることで、アトピー性皮膚炎の皮膚炎や痒みを低下させます。
当院では、塗り薬であるジファミラストが処方可能です。
PDE4阻害剤は、細胞内のタンパク質「AhR」の働きを調節する薬です。
AhR(芳香族炭化水素受容体)は多くの細胞に存在し、化学物質や微生物に対する防御、細胞の発生と文化、生殖など幅広い生理活性に関与します。また、免疫系を調節する役割も持っています。
一部の化学物質(ダイオキシン、ベンゾピレンなどの大気汚染物質)はAhRを過剰に刺激し、活性酸素を発生させます。これにより、炎症が増加したり、細胞のDNAが損傷するなどの酸化ストレスが発生します。
タピナロフは、AhRを適正に活性化させ、上記の酸化ストレスを抑制し、皮膚の炎症を抑える働きがあります。
タピナロフは、2024年6月に臨床使用の承認がなされ、近日塗り薬として発売予定です。
[好発年齢]
[好発部位]
[原因] 肌の乾燥
[悪化因子]
[伝染性]
[症状]
[治療および当院の取り組み]
[好発年齢]
[好発部位と症状]
[原因]
[悪化因子]
[伝染性]
[治療および当院の取り組み]
[好発年齢] 全年齢
[主な種類と原因]
1:一次刺激性接触皮膚炎
2:アレルギー性接触皮膚炎
[伝染性] なし。他人にはうつりません。
[症状]
[検査]
[治療および当院の取り組み]
[好発年齢] 主に成人
[主な種類と原因]
過剰な手洗いやアルコール消毒による皮膚の乾燥が引き金になって発症します。
[伝染性] なし。他人にはうつりません。
[症状]
[治療および当院の取り組み]
[好発時期]
[主な種類と原因]
[伝染性] なし。他人にはうつりません。
[症状]
[治療および当院の取り組み]
[好発年齢]
[好発部位]
[原因] 肌の乾燥
[悪化因子]
[伝染性]
[症状]
[治療および当院の取り組み]